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自励式無効電力補償装置 (STATCOM)

電気的負荷は、無効電力を供給または吸収します。負荷は毎時間毎に大きく変動することが多いため、系統内の無効電力バランスも変動します。その結果、電圧降下や電圧崩壊など、許容できない電圧変動が発生することがあります。

STATCOMは、SVCと比較して、より高速に電圧変動に応じた可変無効電力を連続的に供給し、系統の安定性をサポートします。STATCOMは、電圧形変換装置(VSC)の原理に従い、独自のPWM(パルス幅変調)とミリ秒単位のスイッチングの組み合わせにより動作します。STATCOMは、高調波フィルタの必要性が非常に少なく、物理的な設置面積を縮小が可能です。また必要に応じて、固定またはサイリスタ開閉方式のリアクトルやコンデンサを追加の無効電力補償装置としてVSCと共に使用することで、任意の出力範囲に対応することも可能です。

STATCOMを系統内の適切な1箇所または複数箇所に設置することで、電圧安定性を高め、異なる系統条件下でも平滑な電圧プロファイルを維持することで、送電能力を向上させることができます。また、アクティブ・フィルタリングを行うことができるため、電力品質の改善にも非常に有効です。

大容量STATCOMに関して、日立エナジーはSVC Light STATCOMおよびPCS6000 STATCOMを提供しており、PCS 6000STATCOMは40Mvarまでの定格容量に適用され、SVCLightSTATCOMは40Mvarを超える定格容量に適用されます。

SVC Light® STATCOM

SVC Lightは、モジュラーマルチレベルコンバータ(MMC)をベースとした電圧形変換装置(VSC)を使用し、電力系統への適用を主眼として開発されたSTATCOMです。SVC Lightは、系統にリアクトルを介して接続される電圧源と考えることができ、この自励式変換装置からの出力電圧を制御することにより無効電力を供給・吸収するため、外部コンデンサやリアクトルの設置が不要です。 また、系統電圧の変動の影響をほとんど受けずに無効電力の出力が可能であり、かつ高い動的応答性を有しています。

SVC Lightは、たとえば、脆弱な送電網をサポートし、さまざまな系統条件下において大規模な風力発電所のパフォーマンスを向上させる場合や、夏季重負荷時における送電網のパフォーマンスを向上させる場合に有効です。

また、SVCLightは、優れた出力特性、応答速度を持ち、高速鉄道システムや重工業プラントにおける非対称負荷の電圧平衡化や、電気アーク炉によって発生する電圧フリッカーの軽減、およびアクティブ高調波フィルタリングにも適用されます。

IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)は、SVC Lightの主要コンポーネントです。マルチレベルチェーンリンクソリューションは、フルブリッジモジュールを互いに直列に接続してVSCのアームを形成することにより構築されます。図1aは4つのIGBTを搭載したフルブリッジ、図1bは3つのアームをそれぞれ4つのフルブリッジモジュールで構成した場合です。

SVC Lightは、最大69kVのシステム電圧と最大-/+ 360Mvarのコンバータ定格で利用可能です。それ以上の電圧では、SVC Lightを系統に接続するために降圧トランスが使用されます。また、STATCOMは対称的な動作範囲を提供するため、非対称動作範囲が要求される場合には性能を最適化するために、サイリスタ開閉方式のリアクトルやコンデンサとの並列運転によるハイブリッド・ソリューションの提供も可能です。

図2に、4モジュール×2スタックのモジュール型フルブリッジユニットの写真を示します。IGBTバルブの小型化、無効電力供給・吸収のための進相コンデンサや分路リアクトルがないこと、高調波フィルタがほとんど必要ないことから、SVC Lightは非常にコンパクトにレイアウトすることが可能です。

SVC Light® STATCOM

PCS 6000 STATCOM

PCS 6000 STATCOMは、要求の厳しいネットワークに接続するために特別に設計された効率的な無効電力補償パッケージです。その柔軟性により、動的電圧安定化、非対称負荷の電圧バランス、電気炉によって生じる電圧フリッカの緩和、アクティブ高調波フィルタリングなど、さまざまなアプリケーションに適用することができます。

PCS 6000 STATCOMは、設置時間や必要スペースの点で特に競争力があります。高効率と省メンテナンス性により、運用コストの低減にもつながります。また、静止形無効電力補償装置として、定常動作と動的動作の両方で優れた性能を発揮します。

PCS 6000 STATCOMソリューションは、可動機械部品が最小限に抑えられているため、実質的にメンテナンスフリーです。そのため、点検のための停電は、お客さまのニーズやご希望に応じてスケジュールを組むことができます。また、主回路部に回転部品がないため、信頼性、可用性が非常に高く、運用コストの低減と長寿命を実現しています。装置は通常、組み立て済みのコンテナ内に設置されます。制御装置、パワーエレクトロニクス、冷却装置を含むSTATCOMシステムは、お客さま特有のニーズに合わせてにオーダーメイドされます。

PCS 6000 コンバータ

PCS 6000 STATCOMは、実績のあるGTOをベースに日立エナジーが開発した先進のIGCT技術(集積化ゲート転流型サイリスタ)を使用しています。PCS 6000コンバータは、IGCT PEBB(パワーエレクトロニクス・ビルディングブロック)をベースにしています。この標準化により、省エンジニアリングと低設計コストでシステムを実現することができ、お客さまの最終コストに有益な影響を与えます。また、革新的な接続構成により、一般的に高調波フィルタが不要で非常に優れた高調波性能を実現します。

時間の短縮

モジュラーコンテナシステムの設計コンセプトにより、現場での据付時間を最小限に抑えることが可能です。コンバータは事前に組み立てられ、最高水準の試験を受けており、すぐに設置できる状態でコンテナパッケージとして現場に輸送され、高度な標準化により、現場での試運転時のインターフェースの定義が最小限に抑えられます。また、モジュール設計により、PCS 6000は短時間で新しい場所に移動させることも可能です。

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